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今回、国交大臣が示した「低炭素まちづくり促進法」は、下記の記者会見での発言から、住宅及び建物の省エネ化に照準を絞った法案と見受けられ、昨年の3.11原発事故による国のエネルギー政策の見直しの必要性を反映した物と推測される。しかし、この法案が基本として目指しているのは「持続可能な低炭素社会の構築」である。これは、2009年に策定された「森林・林業再生プラン」やその後の木造化・木質化の推進に関する法律及び、長期優良住宅の普及促進等が掲げていた「持続可能な循環型社会、ストック型社会の形成」と同一の意味を持つものと理解する。単なる省エネ促進法に終わってしまう事が無きように願う。又、いままで掲げていた「循環型社会」の言葉を「低炭素社会」に置き換えたことが、原子力に対する国民感情の緩和を意図したもので無い事も願っている。
前田武志国土交通大臣は2011年9月の就任当初から「持続可能な低炭素社会の構築」を政策に掲げ、震災後の補正予算でも復興支援と低炭素化を両立する事業を盛り込んだ。来年度もより積極的にこの路線を進めていく考えだ(建設専門記者会による共同インタビュー。構成・文責編集部)。
前田大臣:ゼロ・エネルギー住宅/建築物の普及を目標に掲げ、現在、施策をいろいろと打ち出しているところだ。まずは、公共庁舎、学校校舎などを率先的に進める必要がある。
これまでも何度か閣僚懇談会で議論をしてきたが、具体的に被災地で住宅のゼロ・エネルギー化のモデルになるような事業展開を図る。そして、そのモデルを全国に展開したい。
学校校舎のゼロ・エネルギー化については、文部科学省と国土交通省とで共管の委員会を立ち上げた。自分の学校がゼロ・エネルギー化されると、生徒もCO2排出抑制や省エネにも興味を持つはず。子供たちの環境教育にも役立つ。
さらに、次期通常国会の提出を目指して、「低炭素まちづくり促進法」を準備している。住宅・建築物についても、新たに税制上の支援を設け、省エネ化を誘導していきたい。
[詳細は新建ハウジング2012年1月10日号に掲載]
この、「持続可能な低炭素社会、循環型社会及び良質ストック型社会の構築」に貢献する住宅建物を実現する事は、これまでの日本に無かった「資産価値のある家づくり」を定着させる事を可能にする。この事は、環境に対する負荷を軽減させる事と共に、ユーザーに対して、ささやかながらも「豊かさ」を提供する事ができる。
これまでの日本の住宅の寿命は約30年とされてきた。新社会人が努力して頭金を貯めて30代で家を持っても、住宅ローンが終わり、定年を迎えるころには家の寿命が尽きて、退職金を充てた新たな住宅の手当てが必要であった。30年以上の住宅ローンを組んで、実質価格の倍近い金額を支払いながらも、建物の価値は約20年で消滅してしまう。家を持つことは個人資産を持つ事と誤解している人が多いが、持ってしまうことで支出を強いられるものは「負債」である。更に処分をしてもローン残額が清算できない場合は「不良債権」である。
先進国に類を見ない日本の短命住宅が、その「スクラップ&ビルド」から、これまでの日本経済に貢献してきたことは事実である。しかし、その裏には、「土地神話」(日本の土地の価値は上がり続ける)崩壊以降、勤勉で真面目な国民に対して、「負債」及び「不良債権」を広く押し付けてきた現実がある。この日本において「資産価値のある家づくり」が定着しなかったことは至極当然のことであった。
数年来、深刻なデフレ不況が続き、多くのユーザーが「負債」を抱えられなくなっている状況と、人口減少や建物ストック(良質とは言えないが…)の過剰状態等、今後の新規住宅需要に期待が持てない中で、国民の住宅に関する負担を軽減し、差額を他の消費に向けて、内需拡大と景気浮揚に努めようとすることは当然である。その方策として長期優良住宅制度が策定された。又、昨年の3.11原発事故由来の省エネ喚起からのゼロエネ住宅等の促進が確実視されている。
仮に一般的な2000万円の家を建てるとする。この建物を長期優良住宅仕様及びゼロエネ住宅仕様にするには別途、約500万円程度が必要となり、総額2500万円になってしまう。これに住宅ローンを利用すれば、実質支払い金額は約5.000万円になる。この上に、長期優良住宅の寿命の目安の100年間の維持経費に、元々の建物金額である2000万円が必要と仮定すれば、総金額は7000万円になり、住宅へ必要な金額の年平均負担額は70万円となる。
対して、2000万円の家を、100年間の間に、住宅ローンを利用して3回取得するとその総額は約1億2000万円となり、上記との年平均の差額は50万円にもなる。これに加えて、エネルギー費用(光熱費)の差額や、一般住宅には維持管理費を計上していない事を加味すれば、その差額はさらに広がる。そして、その差額は100年間にわたり発生し続け、その恩恵の多くは次の世代にまで引き継がれていく。
建物自体の負担にしろ、光熱費にしろ、本来なら支払いすべき金額が、恒常的に軽減されることは、その分の利益を得た事になり、その建物には資産価値がある事になる。上の例でみると、2500万円で取得した長期優良&ゼロエネ住宅が、ローンを使用しながらも、100年間にわたり総額5000万円以上の利益を生み出す資産価値のある家となる。
住宅は人生最大の買い物であると言われている。しかし、同時にそれは、人生最大のゴミでもある。苦労しながらローンを終えたばかりの我が家を、更に費用を掛けてゴミの山にする事が、精神衛生上好ましくないことは容易に想像できる。建物が長寿命になれば、建築主が自らの代で取り壊す場面を見る事は少ないであろうし、その長寿命化が環境面においても好ましい事は当然である。又、取り壊す場合において、リユースや再資源化の容易な木材や自然素材が多く使用されている事が環境への負荷を軽減するためにも望ましい事である。
建物に、鋼材やケミカル製品が使用されている場合には、限りある資源である上、製造時及び再資源化に大量のエネルギーと労力を必要とする。
対して、再生可能な資源であり、リユースの容易な木材であっても、建物寿命が短く、早期に解体するとなると、環境面での良好な効果も半減してしまう。
森林に立つ一本の樹木の内、建材として利用できる部分は50%以下である。杉の生育に掛る期間が50年であることから、単純計算で、建物の寿命が100年程度である事がバランス上好ましい事を理解してもらえると思う。この間、建材に使用された木材は、発育期に吸収したCO2を固定化(貯蔵)し、伐採跡に植えられた樹木が生長と共に光合成をおこない、新たなCO2の吸収固定化を行う。建物寿命が長ければそれだけCO2の削減に寄与できるが、逆にその寿命が短く、50年以下になれば、CO2の増加は無いものの(カーボンニュートラルの原理)、資源の需給バランスを保つ事が困難となる。
当会は「資産価値ある木の家づくり」を目指して、国産木材と自然素材による長期優良住宅の普及に努めている。長期優良住宅が地震や台風等の自然災害に対しての耐震性能や、経年劣化に対する耐久性能を確保しなければならない事を、既に、多くの方が御存じであろう。これらの性能を確保するには、合板や集成材、或いは防腐防蟻剤等の薬品を使用することで比較的容易に実現可能である。しかし、住まい手の健康を損なう(シックハウス症候群)心配や、薬品や接着剤の環境への負荷を考えた時に、安易な性能確保には安全を棄損する可能性があると考えた。それは、建物寿命が長ければ長いほど、より重要度を増す。本物の安全・安心を提供する住宅は、数字に置き換える事の出来ない価値を内包している真の「資産価値のある家」と確信している。
その実現のために、国産無垢木材の品質確保の技術開発、無垢材や自然素材を活用した建物の品質確保のための工法開発、品質表示木材採用と構造計算(許容応力度計算)実施による明確な建物強度の確保等に努めてきた。又、良好な住環境を確保するための建物内空気環境等も重視してきた。これらの行為に評価を得て「国交省推進:長期優良住宅先導的モデル事業」の採択を受ける事も出来た。これらは、ユーザーに安全安心と快適をそなえた真の「資産価値ある家づくり」の提供と、「持続可能な低炭素社会、循環型社会の形成・構築」への貢献が可能であるとの信念からの行いである。
2012年度の政府予算案が12月24日、閣議決定された。一般会計総額は90兆3339億円と、当初予算では6年ぶりに前年を下回ったものの、東日本大震災の復旧・復興費用を別枠かしているため、これをあわせた実質は、96兆円超となる。・・・・・・
住宅のゼロエネ化を推進する補助事業は、国土交通省と経済産業省が共同で実施する。うち中小工務店のゼロエネ住宅建設を支援する補助制度は、国土交通省が担当し、ゼロエネ住宅建設1戸あたり最大165万円を補助する。経済産業省が実施する補助事業は同じゼロエネ化がテーマでも、省エネ機器やエネルギー管理システムを組み合わせたシステムの導入に対する補助として制度設計。先ごろ行われた提言型政策仕分けでは、両省の事業の類似性が指摘され、窓口を一本化するなど合理化を図った形だ。
地域での長期優良住宅の供給体制整備を支援する「地域型住宅ブランド化事業」は、「木のいえ整備促進事業」の後継事業。これまでと違うのは、材料供給者や施工業者、設計者などが連携して、地域の生産体制を作って供給していく取り組みを補助の要件とする点。補助率などは同じで、地域材を使った場合、最大で1戸あたり120万円の補助を受けられる。
「低炭素まちづくり促進法」(ゼロエネ住宅促進)について、現段階で得られる情報に基づいて考察する。ゼロエネ住宅の定義の概要は、断熱性能の高い建物、省エネ設備機器、創エネ設備の三つのファクターをパッケージにした、高効率な省エネ住宅建物を意味している。具体的には、次世代断熱性能の建物にLED照明やヒートポンプ型給湯器、省エネ型エアコン等を採用した上で、太陽光発電等を設置した建物(あくまでも想定モデルケース)になると思われる。省エネ家電やHEMS等のスマートハウスIT技術は、上記記事によると経済産業省管轄で別枠となるようである。
ゼロエネ住宅の仕様を整えるには、概ね400万円程度のイニシャルコストが必要で、対して光熱費の削減効果は一般的な家庭で年間15万円~20万円と考えられ、単純計算でその償却期間は25年間以上になる。これに機器の維持管理や更新費用を加味すれば、その償却期間は更に伸びる。これでは、今までの住宅寿命30年の建物ではユーザーに経済的メリットは生まれない。投資効率ゼロ住宅になってしまう。ただし、経済的効果を考慮しなければ、このゼロエネ住宅を選択することは、環境面やエネルギー安全保障の上で貢献出来るものではある。
ゼロエネ住宅を「資産価値のある家づくり」に繋げるには、建物の長寿命化が効果的である事を理解していただけると思う。その寿命が長ければ長いほど資産価値は大きくなり、同時に環境的貢献も拡大する。ゼロエネの償却期間から考えても50年程度以上は必要であり、長期優良住宅が目指す100年以上の長寿命化は理想的である。
ゼロエネ住宅と長期優良住宅をセットにした時のイニシャルコストについて考える。先にも述べたとおりゼロエネ住宅のイニシャルコストは約400万円と想定され、長期優良住宅については、現在の新築住宅の実質的な仕様を考慮すれば、一般的には約200万円と推測される。ただし、これらをセットにした場合、断熱性能確保等重複した仕様が存在するために、その合計イニシャルコストは600万円ではなくて500万円程度と考えられる。
ここで注視すべき事は、ゼロエネ住宅を選択した場合に、100万円を増額することで、長期優良住宅をセットに出来る事である。100万円は決して小さな金額ではないが、再三述べてきたゼロエネ長期優良住宅の経済的メリット及び環境面での貢献度を考慮すれば、あえて「僅か100万円」と表現するものである。
上記のニュース記事にあるように、ゼロエネ住宅並びに長期優良住宅に其々、165万円、120万円の補助金が予定されているようである。長期優良住宅に関してはこれまでもあったが、今年度は縮小傾向の様子で、地域材(国産材)活用の場合にのみに限られるようである。又、その場合でも、かなり高いハードルが設定されている事が読み取れる。幸い、SSDプロジェクトユニオンは条件を満たしている様である。
これまでの考察におけるシミュレーション計算には、これらの補助金は考慮していない。従って、補助金活用が可能であるとすれば、その場合の資産価値はさらに増加する。又、それは、建物の長寿命化に比例して拡大してゆく。
ここで注意すべき事は、2種類の補助金を重複して活用できる可能性が低い事である。基本的に1案件に対して、複数以上の補助制度の活用は禁じられていたはずである。この場合には実質金額の多いゼロエネ住宅を選択する事が一般的になるであろうが、費用対効果が高く、建物の基本性能に関わる、長期優良住宅の制度を先に活用しておいて、後々に太陽光発電を設置する手法も一考の価値がある。太陽光発電は今後も価格が下がり、尚且つ、発電効率が高まる可能性もあり、又、再エネ買い取り価格の動向等も確認する事が可能となる。
本来、「低炭素まちづくり促進法」(ゼロエネ住宅)と「地域型住宅ブランド化事業」(国産材活用の長期優良住宅)は、「持続可能な低炭素社会及び循環型社会の形成・構築」という同一の目標を共有している。目標の合理的な達成には両者を一体のものとして考慮する事が効果的である。この事を、国も理解をして、補助制度に関しても、重複する事を想定に入れた制度設計が行われる事を希望する。いづれにしてもこの事は、今後、注視を払う必要がある上、関係先に対して、早急にアピールすべき事項であると考える。
消費税増税が現実味を帯びてきたこの時期に、住宅の取得を検討される方が相当数居られる事を想像する。それらの方々が、其々の事情に整合した「資産価値のある家づくり」を目指して行動することで、御自身や社会、及び、この国の環境や現状に、好ましい結果をもたらす事を切望する。
SSDP事務局 渡邊豪巳
昨年後半に、首都圏での非住宅案件の木造化についてのニュースを紹介した。これらは、国が2009年に「森林・林業再生プラン」を策定して10年後の木材自給率50%以上を目指し、低層の公共建築物の木造化・木質化の推進に関する法律を施行する等(2010年)の具体策を持って示した方針に沿った動きである。
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| 野崎まいり公園コミュニティーセンター多目的ホール SSDランバーを構造部材に採用 平成18年 菅家設計室 |
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住友林業(株)(本社:東京都千代田区、市川晃社長)は、国土交通省による2010年度第1回「木のまち整備促進事業」採択プロジェクトの3階建て有料老人ホーム「グランダ多摩川・大田」(東京都大田区 延べ床面積:1997.11m2)を完工引渡し、2011年12月1日にオープンした。
「木のまち整備促進事業」は、再生産可能な循環資源である木材を大量に使用する建築物の整備によって低炭素社会の実現に貢献するため、先導的な設計・施工技術を導入する大規模木造建築物の建設に対し、その費用の一部を補助される。
老人ホームを木造建築にすることによる。り、木質感を活かし、入居者の精神的安定を確保すると共に、耐火構造により安全性も確保。RC造と比較して、転倒事故による怪我が軽減されるという報告もある。
東京都内の小・中規模の建築物を木造で建てる動きが目立っている。建築構造設計の東昭エンジニアリング(神奈川県横浜市)には、今年に入り小・中規模の木造建築物の構造計算の依頼が増えているという。軸組み工法、ツーバイ工法どちらも増加しているという。
同社が構造計算を行った木造耐火構造3階建てのグループホームが、このほど東京都葛飾区宝町で上棟。同ホームは、地域密着型介護施設で延床面積は762.23m2。カネシン(東京都葛飾区)の金物工法「プレセッター」を採用している。
上で紹介したニュースの内、住友林業㈱の有料老人ホーム案件は、記事にもあるように、平成22年度「木のまち整備促進事業」に採択された事業で、同社内において、国の方針に則り新規設立された「木化推進室」の第一号案件である。同推進室では現在、被災地(陸前高田市)の復興施設等を手掛けている。今後、これら中小規模の施設における木造化・木質化が拡がる事は確実視されている。当会(SSDプロジェクト)においても、本年、大阪府木材工業団地協同組合(堺市美原区)の50周年事業である飲食施設の建設計画に、当会会員建築家(DID式田完氏:意匠設計担当、明月社山岸飛鳥氏:構造設計担当)と共に参加し、SSDランバー(国産無垢品質表示材)及び関連技術を提供する予定である。(詳細を近日中に木材工業団地HP及び当サイトにて紹介の予定)
これら、木造化・木質化の動きは、現段階では、前出のように住宅メーカーや、大手設計事務所が中心となって進められており、これまで木構造とは一定の距離を置いていたゼネコン等も注目している。
対して、今日まで国内において、住宅分野を中心として木造建築を担ってきた地域密着型の建築業者(工務店・ビルダー等)が取り組むには、同じ木造でありながらも、住宅とは異質の木構造技術(大空間対応の構造計画、防耐火性能、綿密な構造計算等)への対応や、各種施設計画のノウハウ等の設計能力、施工における品質等の管理能力など、克服すべき課題が数多くある。この課題に一工務店単独で挑戦する事は、現状において、困難であると予想される。また、木構造や施設設計に長けた設計者や、木構造用部材・関連技術を提供できる供給者等とプロジェクトを構築するには、全体をプロデュースする能力も必要となる。
工務店等が、これらに取り組むために、まずは、信頼できる設計者や木材及び技術提供者とめぐり合う事が、前提条件となる。
住友林業㈱が設計施工を行った有料老人ホームについては、構造にツーバイフォー工法を採用し、国産材活用においては、内外装に不燃処理を施した国産杉加工品や国産ヤマザクラ無垢フローリングを使用している。(住友林業㈱HP:ニュースリリースから引用)
住友林業HPより
もう一方のニュースで紹介しているグループホーム案件については、木造ながらも、金物による接合工法を採用している。この事から、必然的に構造用木材は集成材を使用する事となり、その集成材の主流は、ホワイトウッド、レッドウッド、米マツ等の輸入材である。
これらの規模の建物には、一般的な住宅案件 (2階建て以下尚且つ、500㎡以下) とは違い、構造計算等で、必要十分な建物強度の確保を明確に示す義務がある。この時に、使用する構造用部材の品質が曖昧であると、採用できないのが道理である。国産構造用部材におけるJAS認定材や集成材の割合が低いことから、木材需要者側(設計者、建設業者等)に、品質面での信頼を得られていない事が容易に想像できる。国の方針である木造化・木質化の目的には、木材自給率の向上が含まれているにも関わらず、国産木材が構造用木材として使用されていない現実を国産木材供給者は真摯に受け止める必要がある。
施設における木造化・木質化の目的の達成には、国産材を構造用部材として活用する事がより大きく貢献出来るものと考える。では、国産材が構造用部材としての信頼を獲得するために、国内木材供給者が取り組むべき課題等を考察する。
国が「森林・林業再生プラン」で示した方針に対して、一部の大手供給者を除いて、大半の木材供給者は対応出来ていない。木造化・木質化の動きについても、敏感に反応しているのは建築関係者が主で、林業関係者の多くが国の方針に対して傍観している現実がある。国産材の需要低迷期に地道な技術開発等、改革の努力をしてこなかった事が傍観せざるを得ない原因である。1990年代初めのウッドショックで輸入材全般が高騰した時に、国内供給者は、需要の拡大を期待しつつも、木材乾燥等の技術開発を疎かにした結果、欧州 (ヨーロッパ) 材にとって代わられた苦い経験を持ちながらも、同じ過ちを繰り返す事を危惧する。
国産木材が構造用部材としての信頼を獲得するためには、品質性能を確保し、それを保証して提供しなければならない。その為に2通りの方法が考えられる。一つは、国産無垢構造材に品質確認(強度及び含水率:グレーディング)の上、選別して、JAS認定材等として提供することであり、もうひとつは、既に一部大手供給業者が取り組んでいる、国産木材を集成材に加工する方法である。
前者については現状、殆どと言っていいほど取り組みが進んでいない。国産無垢材の品質に関する技術(木材乾燥等)の開発がいまだに確立されていないことがその要因である。木材自給率が低い状況下での国産材の流通量に対する乾燥材やJAS認定材の割合が著しく低いことがそれを示している。技術大国と言われている現代日本において、品質が保証されていない部材が市場に流通している事は他からは理解を得られないであろう。ここにきて、林業関係者が改革に対して真摯に取り組んでこなかった姿勢が問われている。この事が現在の木材自給率が低い現状の根本的原因であるとも考えられる。
国産材の集成材化については、国産材活用の必然性を理解していた一部の大手供給者がすでに取り組み済みではある。しかし、効率的生産を行うには大型工場等の設備投資が必要で、一般の林業関係者が参画するには、規模や資金面で困難を伴うことになる。この集成材化は、国産材活用の合板生産とまったく同様の周辺事情を持っている。これらの措置を行って国産材活用を普及促進することは、木材自給率を押し上げるためには効果のある手段であるが、「森林・林業再生」の本来目的の観点からは疑問が残る。国内の木材供給者の中には、合板用資材や集成用ラミナ製材としての需要に期待する声も聞かれるが、実際に九州地域で見られる現状を報告する。
当地域では近年、超大型の集成材工場やラミナ製材工場等が建設され稼動している。又、国産材活用の合板メーカーも存在している。これらの製品の製造上の特徴に、原木丸太のやや難あり材(B材)を効果的に活用できる点がある。又、加工過程にコストが掛かるため、安価なB材を活用することが必然ともいえる。ただし、このB材のみの需要が拡大したことで、良材(A材)価格が影響を受けて値崩れをおこし、最終的に山元の収入が減少してしまうことになった。この結果、山元は原木の出荷(供給)を抑える事となり、市場での慢性的な原木不足や、集成材工場においての資材調達の不安定化を招くことになった。
「森林・林業再生」のために木材自給率を高めた上でエコロジーな循環型社会を形成するには、先に述べた国産材の信頼獲得の為の2つの手法について、双方バランスをとりながら向上させることが必要となる。そのためには、無垢構造材の品質保証提供への対応が喫緊の課題である。
前出の2件のニュースのように、木造化・木質化の流れにおいても、国産材が構造材として活用されていない現実は残念に思うが、筆者に、それ自体を問題視する意図はない。十分な品質を確保した建物を提供する責任を負っている設計・建設関連の木材需要者が、その責任に基づいて判断、選択した結果であると理解する。むしろ問題は、木材供給者が、需要者からの信頼を獲得可能な製品を提供出来ていない事にある。すべての木材供給者は、この現状を改善すべく、早急に、それぞれの立場での取り組みに尽力する必要がある。
木材需要者(設計者、建設業者、事業主等)は、責任ある建物提供をする立場を保持しつつ、国産材の活用の必要性を理解した上で、構造用木材に求める品質を国産木材に対して要求する姿勢を持って頂きたい。その上で、樹種や形状の適材適所への配置等の工夫を行うなどして、国産材の活用可能な場面を創る努力を切望する。
国産木材の供給者と需要者の間に、共通の認識及び目標を持てなかった事が、これまでの好ましからざる状況(木材自給率の低レベル等)をもたらせた大きな要因であったと考える。提供する為の努力と使用する努力が良好な相関関係を構築できた時に真の成果を獲得できるものと信じる。
国や行政が、「森林・林業再生プラン」にて方向性を示し、数々の具体的政策を打ち出したことは、数少ない政権交代の成果のひとつといえる。又、それらが一定の成果を得ている事も事実である。その上で、今後はその政策において合理的・効果的な内容を検討する事を期待する。「木の家整備事業」が、中小建設業者に長期優良住宅と国産材活用への取り組みを促すことの成果を得たことは大いに評価できが、国産材の活用を厳格に定めた事に加えて、その品質に対しての条件付けがされなかった事が残念である。この事業の対象案件において、未乾燥の杉無垢桁材が使用されているのを見た時に、長期優良住宅の目的や国産材活用の促進の意義との齟齬を感じた。
SSDプロジェクトは、これまでSSDランバー供給事業を通じて、住宅分野を中心に進めてきた「品質表示の国産無垢構造材の提供」及び「全ての木造建築に構造計算の実施を促す啓蒙活動」の取り組みを、今後も鋭意継続させると共に、本年は、SSDランバーのJAS認定取得を目指した活動を行う事と、非住宅分野での採用を視野に入れた技術やシステムの開発に努力する所存である。又、企画型住宅商品のSSDコンセプトハウスの発表を通じて、品質表示国産無垢構造材の活用法を提案掲示すると共に、実際案件の提供も開始する予定である。
当会の活動が、ユーザーに対して安全且つ付加価値及び資産価値のある建物を提供する事とあわせて、エコロジーな循環型社会の形成に微力ながらも貢献出来る事を目指して努力する事を年頭に決意する。
SSDP事務局 渡邊豪巳
参考資料 木材自給率の推移 (H22年 森林林業白書から抜粋)PDF
参考資料 国産人工乾燥材割合(H22年 森林林業白書から抜粋)PDF
建設経済研究所と経済調査会は1月25日、「建設経済モデルによる建設投資の見通し(2012年1月)」を発表した。
それによると2011・12年度は、東日本大震災の復旧・復興による政府建設投資が増加し、民間建設投資の回復基調も継続。11年度は43兆8400億円(前年度比6.6%増)、12年度は44兆8300億円(同2.3%増)と予測した。
民間住宅については、復興需要が押し上げ要因となって、11・12年度は回復基調に。11年度の投資額は前年度比4.3%増、12年度は同4.9%増と上向くとする。
住宅着工戸数は、東日本大震災を機にいったん落ち込み11年4~11月に持ち直しの動きをみせており、12年度にかけて緩やかな回復基調に向かうとした。11年度の着工戸数は84.2万戸(同2.8%増)、12年度の住宅着工戸数は88.8万戸(同5.4%増)と予測。
持家については 各種支援制度終了前の駆け込み需要とみられる動きがあり、11年9月以降は前年同月比で減少。今後は被災住宅の建て替えなど、復旧・復興が着工戸数を後押しするとし、11年度の着工戸数は30.5万戸(同前年度比△1.1%)、12年度は32.6万戸(同6.7%増)とみる。

2012.01.26 新建ハウジングWEB 転載
大阪ガス株式会社(大阪府大阪市)と積水ハウス(同)が昨年2月から共同で居住実験を行う「スマートエネルギーハウス」が、財団法人建築環境・省エネルギー機構の「ライフサイクルカーボンマイナス住宅認定(LCCM住宅認定)」第1号を取得した。
LCCM住宅とは、建設時、居住時、廃棄時それぞれにおいてできる限りCO2排出量を削減し再生可能エネルギーを利用することにより、住宅のライフサイクル全体でCO2の収支をマイナスにする住宅のこと。
認定制度は昨年12月にスタート。建築環境総合性能評価システム「CASBEE」に基づき、評価・認定を行う。
認定第1号を取得した「スマートエネルギーハウス」(LCCM住宅☆☆☆☆取得/CASBEE戸建‐新築2010年度版すまいの環境効率☆☆☆☆☆[Sランク]取得)は、奈良県北葛城郡に建設した実証実験住宅で、積水ハウスの環境配慮型住宅「グリーンファースト」をベースに高い断熱性と耐久性を装備。燃料電池と太陽電池に蓄電池を組み合わせてHEMSで最適制御している。実際に3人家族が居住しながらスマートハウス関連システムの省エネ効果や快適性・利便性の向上について検証している。
2012.01.26 新建ハウジングWEB 転載
経済産業省が検討している建築分野の省エネ強化策が25日、明らかになった。断熱材などの建築材料に新たな省エネ性能目標を導入。住宅や建築物全体の基準も強化し、2020年までにすべての新築物件で適合させるよう関連事業者に義務付ける。
今後の原発縮小に備えて、家庭やオフィスビルの節電効果を高めることが狙い。総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)の部会で27日に大枠をまとめ、今通常国会へ提出する省エネ法改正案に一部を盛り込み、取り組みを具体化させる。
建材の基準は「トップランナー制度」と呼ばれ、5年程度先の高い性能目標を定めて達成を求める方法とする。
2012.01.25 47NEWS(共同通信) 転載
経済産業省は1月25日、太陽光発電の余剰電力買い取り価格を、現行のままで6月30日まで延長する案[表]を示した。これについて、一般からの意見を2月23日まで募集している。
現行価格の有効期限は3月末まで。ただ、7月1日から再生可能エネルギー固定価格買い取り制度の施行が決まっており、買い取り価格を新たに設定しても適用期間が3カ月と短くなることや、新制度移行時に混乱を招く可能性もあることから、変更しないほうがよいと判断した。
7月から始まる新制度では、太陽光発電以外にも風力、水力、地熱、バイオマスを用いて発電された電気も買い取り対象となる。買い取り価格も見直す予定。
2012.01.25 新建ハウジングWEB 転載
マテックス(東京都豊島区)は、今冬の窓リフォームに関するアンケート調査の結果を同社が運営する窓の情報サイト「窓のコンシェルジュmadoka」で公表した。調査は読売新聞の会員制サイト「yorimo(ヨリモ)」で2011年12月に実施、5282人が回答した。
「住宅エコポイントが再開したことを知っているか」との問いには、「使用する予定がある」2%、「知っている」33%に対して、「聞いたことはあるがよく知らない」41%、「知らない」24%との結果となった(回答者のうち4995人を抽出)。
また「現在の住まいの窓は結露するか」聞いたところ、「結露がひどく毎日掃除をしている」が19%にのぼり、「結露しているが気にするほどではない」は58%いた。(回答者のうち関東の戸建住宅に住む1705人を抽出)。
同社はこの結果を踏まえ、窓リフォームで結露が軽減できることを広く情報発信していきたいとする。
2012.01.25 新建ハウジングWEB 転載
住宅金融支援機構(東京都文京区)は昨年11月に実施した住宅取得にかかる消費実態調査(平成23年度「新規住宅取得者の耐久消費財購入実態調査」)の結果をまとめた。
それによると、「太陽熱温水器・太陽光発電システム」の購入世帯比率は10.5%にのぼり、2003年の前回調査時(1.3%)と比べ約8倍に拡大していることがわかった。
特に新築戸建てでは、約6世帯に1世帯の割合(17.5%)で太陽光発電システムを購入していた。
購入世帯あたりの平均購入額は、太陽光発電システムが177万3100円、太陽熱温水器が26万5100円。
調査は、住宅取得にともなう耐久消費財の購入状況や消費意識の動向を把握するもの。2010年11月~11年4月までに住宅を取得した世帯を対象に行い、有効回答数は1575件だった。
2012.01.24 新建ハウジングWEB 転載
大都市の狭小地での建て替え需要をめぐり、住宅メーカーが3階建て住宅の拡販を狙っている。大和ハウス工業は24日、実際に使える面積を一般的な鉄骨住宅よりも広く取れる3階建ての新商品「xevo03(ジーヴォ・ゼロサン)」を発表した。有力ブランドの「ヘーベルハウス」を展開する旭化成ホームズも都心での居住をアピールした商品を開発しており、市場全体の活性化につながりそうだ。
民間調査会社によると、都市部の人口が多い21都府県の3階建て住宅の需要は、少子化などを背景に2004年度の約2万棟から09年度には1万2000棟に減少した。地元の工務店が手がけるケースが多いものの、大手住宅メーカーの中では旭化成がトップシェアを握る。
実績が年間約300棟にとどまる大和ハウスは、都市部のニーズを2年間かけて調査。部屋の広さと耐震性を重視する傾向が強いことが分かったという。
こうしたニーズを新商品に取り込み、1階の柱幅を従来商品より2センチ広げ、外壁も2重の耐力壁にして耐震性を強化。壁厚のロスが少ない軽量鉄骨住宅の特長を生かし、各階で1畳分広い有効面積を確保した。
同社の渦居隆司専務執行役員は会見で「不得手だった都市部の建て替え層の需要を取り込み、首都圏で3%の市場シェアを取りたい」と説明。従来比約40%増の年間430棟を販売目標に掲げた。
これに対し、旭化成は11年11月、部屋空間との一体感がある庭園を3階部分に取り入れた商品「ヘーベルハウス スカイコテージのある家 天空こども城」を発売。パナホームも同年9月、ビル建築の構造や機能を応用して耐震性などを高めた鉄骨住宅「Vieno(ビューノ)」の販売を始めた。
住宅担当のアナリストは「首都圏では相続などで取得した狭小地の建て替え需要が根強い」としており、3階建て住宅が冷え込んだ住宅市場の起爆剤となる可能性もある。
2012.01.25 SankeiBiz 掲載記事転載
社団法人日本建築士会連合会は、建築分野での活躍を目指す全国の高等学校生を対象に教育活動の一環として昨年から実施している「建築甲子園」を開催、静岡県立科学技術高校が初優勝を果たした。
今年で第2回となる建築甲子園は、全国の高等学校で建築学科の学生らと監督のチームが参加。与えられたテーマに合わせた設計コンセプトとプランに対する審査員5人の評点で勝敗を競う。
今回は「地域とくらし」をテーマに、全国から35校が参加し、トーナメント形式で1回戦から決勝まで5回戦が行われた。優勝したのは静岡県立科学技術高等学校の建築研究部の3年生メンバー4人。「よみがえる現代の宿場町」として、地元静岡市内にある江戸時代の宿場町「丸子宿」を題材に、大小さまざまな戸建住宅が用水路を挟んで集まり屋外スペースを含めた広がりある居住空間で、短期滞在者なども受け入れ、人が集って住まう空間の豊かさを表現した。
静岡県立科学技術高校は昨年の準優勝を経ての初優勝。昨年優勝した滋賀県立安曇川高等学校が準優勝となった。
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2012.01.23 新建ハウジングWEB 掲載記事転載