木造率が高まる公共建築物、一般企業にも広がるか?

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林野庁が3月に発表した“2015年度(平成27年度)の公共建築物の木造率について”によると、同年度内に「公共建築物の木造率(床面積ベース)は11.7%となり、“公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律”の施行から5年目にして初めて10%を超えた前年度(10.4%)から、さらに1.3%の増加」となっており、年々公共建築物への木造活用が進んでいることが示されている。
この法律は、2010年5月26日に交付され、同年10月1日に施行された。国はこの法律の趣旨として、

 1、 木材の利用の確保を通じた林業の持続的かつ健全な発展を図り、森林の適正な整備および木材の自給率の向上に寄与する
2、 農林水産および国土交通大臣かの策定する公共建築物における国内で生産された木材その他の木材の利用の促進に関する基本方針について定める
3、 公共建築物の建築に用いる木材を円滑に供給するための体制を整備する等の措置を講ずる

と、官庁の営繕において国内材の活用を推進することとしている。
また、基本的な方向として

 1、 公共建築物における木材の利用の促進が、林業の再生や森林の適正な整備、地球温暖化の防止等に貢献すること

2、 過去の非木造化の考え方を、公共建築物については可能な限り木造化、内装等の木質化を図るとの考え方に転換

と示している。

15年度の建築物全体の木造率は41.8%(前年度比1.5%増)、うち公共建築物は11.7%(同比1.3%増)。そのうち低層の公共建築物は26.0%(同比2.8%増)と我が国の建築物は、公共関連を含めて木造が増加傾向にある。福岡県における公共建築物の木造率は12.4%(同比2.7%増)となっている。

福岡県内での木材を活用した公共建築物は、「とくに幼児教育や小中学校などの教育機関において採用されるケースが増えている」(地場工務店幹部)という。続けて「木の独特の温かみや柔らかな空間が醸し出されるためか、採用した建築主の方々は、“木材の建築を採用して良かった”という感想が多いそうだ。統計は取っていないものの、幼児や小学校での教育において、心理・情緒・健康面での効能が見られるという。心が落ち着き、ストレスを緩和させ、集中力が増して子どもたちの能力を引き出すことの一助となり、充実した教育環境が構築される。そして建物内の温・湿度を適正に調和し、快適な空間をつくる効能が木材にはある。その効果効能が、徐々に認知されて木造率が高まっていると推察される」(前出幹部)と分析している。

木材の活用は、環境負荷低減や森林の保全、そして我が国の木の文化の継承に貢献するものである。建物全体を木造化しなくても、内装を木質化することで、同様の効果効能が期待できるという。教育機関などの公共建築物だけでなく、一般企業のオフィスにも導入することで、職場の環境が活性化されると推測される。相応の初期投資は発生するが、働きやすい環境をつくる施策の1つとして、企業経営者に検討していただきたい。

【河原 清明】