ミサワホーム 6メートルの通し柱で木造2層の新構造

日経ホームビルダー

 

ミサワホームは、独自構法のフューチャー・ウッド・システム(FWS)の新展開として、木質組立通し柱連結構造を考案した。設計の自由度を高めたほか、コストも低減。戸建て住宅などに適した構造性能と普及価格帯に収まるコストを実現することで、注文住宅や2層程度の店舗など、小規模木造建築物への展開を狙う。

 

同社は今後、外部の設計事務所や施工会社と連携し、FWSを普及する方針だ。

 

FWSの木質組立通し柱連結構造を採用した戸建て住宅(写真:ミサワホーム)
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FWSの木質組立通し柱連結構造を採用した戸建て住宅(写真:ミサワホーム)

 

FWSの木質組立通し柱連結構造を採用した戸建て住宅。内部は大スパンで構成している(写真:ミサワホーム)
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FWSの木質組立通し柱連結構造を採用した戸建て住宅。内部は大スパンで構成している(写真:ミサワホーム)

 

■コストは同社住宅と同程度

 

FWSは、ミサワホームグループのミサワホーム総合研究所が中心となって開発した構法だ。高強度の木質接着複合パネルなどを張り合わせて中空構造の柱や梁(はり)を構成。これらを金属製のジョイントを用いて接続し、大スパン化を実現するのが基本的な考え方だ。

 

新たに開発した木質組立通し柱連結構造は、FWS構法のバリエーションの1つという位置付けだ。明治大学理工学部の梶川久光准教授とミサワホームが共同で考案した。柱を長さ6メートルの通し柱としたのが特徴で、柱と、柱同士を連結する梁および屋根面のみを構造体として用いる。2階建ての建物が対象だ。

 

柱が通し柱となったことで、2階の床レベルを自由に設定できるようになったほか、床面を構造体としないことから、吹き抜けの位置も自由に設定できる。スキップフロアなども設計可能だ。

 

木質組立通し柱連結構造の構造躯体イメージ。柱と、柱同士を連結する梁および屋根面のみを構造体として用いる(資料:ミサワホーム)
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木質組立通し柱連結構造の構造躯体イメージ。柱と、柱同士を連結する梁および屋根面のみを構造体として用いる(資料:ミサワホーム)

 

柱の断面図(資料:ミサワホーム)
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柱の断面図(資料:ミサワホーム)

 

床面を構造体としないことから、1、2階の床などに、木質接着複合パネルをそのまま利用。同パネルはミサワホームの住宅で採用していることから、新構造専用に制作する必要がなくコストが抑えられる。

 

さらに、基礎と通し柱を強固に接合する仕様とし、梁の部分に掛かる負担を低減。柱と接続する梁両端の金物の接合仕様を簡略化できたことも、コスト低減に貢献した。

 

建築コストは、戸建て住宅の場合、同社が販売する木質接着複合パネル住宅と同程度に収まるという。

 

FWSの木質組立通し柱連結構造を採用した戸建て住宅。構造設計は本岡構造設計一級建築士事務所、意匠設計はTECLAB architects group、施工は池田工務店(写真:ミサワホーム)
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FWSの木質組立通し柱連結構造を採用した戸建て住宅。構造設計は本岡構造設計一級建築士事務所、意匠設計はTECLAB architects group、施工は池田工務店(写真:ミサワホーム)

 

FWSの木質組立通し柱連結構造を採用した戸建て住宅の内観(写真:ミサワホーム)
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FWSの木質組立通し柱連結構造を採用した戸建て住宅の内観(写真:ミサワホーム)

 

 

■物件概要
建設地:栃木県栃木市
建物面積:建築面積51m2、延べ床面積101m2
階数:地上2階建て
構造設計:本岡構造設計一級建築士事務所
構造設計協力:株式会社ミサワホーム総合研究所
意匠設計:TECLAB architects group
施工:株式会社池田工務店、ミサワホーム建設株式会社(基礎および躯体施工)
竣工:2017年3月

 

 

(日経ホームビルダー 安井功)

 

[日経ホームビルダーWeb版 2017年4月3日掲載]