公共建築物等木材利用促進法 施行から6年、民間波及に期待

公共建築物等木材利用促進法が2010年10月に施行されて6年が経過した。今年2月に発表した14年度の低層公共建築物の木造化については対象が全体で100棟、延べ床面積の合計は1万1,769㎡だった。このうち木造化されたのは32棟、延べ床面積4,047㎡、木造化率は32%と前年度から11.7㌽増加したが、木材使用量は前年度の6,695㎥から大幅に減少して2,705㎥にとどまった。
もともと国が直接整備する公共建築物の件数が多くなく、低層では年間100件前後、14年度は対象になる延べ床面積も半減したが、直接的な木材需要創出を見込める分野ではなく、象徴的、先導的な意味合いが強く、地方自治体や民間への波及効果を狙ってのものといえる。
本紙では全国47都道府県に木材利用促進状況に関するアンケートを実施した。公共建築物の分野では主な需要を形成すると見込まれるからだ。都道府県ではすべての自治体が木材利用方針を策定しており、市町村でも1,741市町村のうち1,520市町村が木材利用方針を策定済み(16年8月31日時点)で、都府県別では宮城、山形、新潟、群馬、埼玉、東京、神奈川、新潟、滋賀、大阪、兵庫の11都府県内の市町村で方針策定が終わっていないだけだ。東京、千葉、神奈川、大阪など都市部ではまだ市町村の木材利用方針策定率が低く、都市部での方針策定を推進することが急がれる。
岩手県では東日本大震災の応急仮設住宅も含めて集計しており、11年度は公共建築で4万7,781㎥、公共工事で4,372㎥と国の20倍以上の実績となった)。震災関連が多かったことで12年度は公共建築1,143㎥、公共工事7,149㎥に減少したが、15年度は公共建築で5,840㎥、公共工事で2,882㎥まで回復している。
調査を通じて分かってきたのは、建築以外に土木分野での木材利用量が多いことだ。
群馬県の15年度実績は、公共建築物が239㎥に対して県発注の土木工事が2,237㎥。石川県も公共建築物1,206㎥に対して土木が1,395㎥。京都府も建築443㎥、土木1,177㎥などとなっている。
他方では木造化の推進と費用対効果の検証の必要性を指摘する声もあり、木造化することがふさわしいものなのか、そうでないのかも検討する必要がある。
最近では木造化、木質化の効果を求めて多くの人が利用する街中の施設の木質化に重点を置くケースも出てきた。CLTの推進には当面、地方自治体による公共需要がないと事業として成り立たないなど政策として誘導する方針も問われている。