木材・建材・住宅会社の新事業領域 新築住宅依存を引き下げる

木材・建材業界は、新設住宅市場に需要の多くを依存してきた。少子高齢化、住宅ストック数の充足など、人口動態や住宅ストックなどの面で中・長期的には新設住宅着工の減少は避けられない問題で、その対応策が求められている。
脱新設住宅市場としては、リフォーム市場が代表的な事例となるが、非住宅木造建築、中古住宅・リノベーションなど新設住宅市場の周囲に広がる市場と海外市場が主な対象分野になる。
兼松サステックのセキュリティ機器事業のようにあまり既存の木材・建材事業とは関連のない新規分野が企業の収益力の源泉となるケースもある。
木造住宅のノウハウを生かしやすい非住宅木造の分野は市場の拡大よりも新規参入が多く、今後は競争が激化する可能性もある。住友林業の木化事業は参入から5年で年間40億円規模の事業に拡大し、100億円を目指す方針も示している。
一方で、増加する木造耐火構造の施工を専門に手掛ける施工会社も登場。ニッチでノウハウの必要な分野なので、専門性を生かして事業化できる好例ともいえる。CLTは、需要面の広がりが小さすぎることが当面のネックだ。
桧家HDは、住宅事業のノウハウを生かして、高齢者施設の建設事業を展開してきたが、そこから一歩踏み出して高齢者施設の運営にも携わるようになっている。既存事業とのシナジー効果を考えるうえで、実際に運営にもかかわることでより高度なノウハウが蓄積できる可能性がある。
セルロースナノファィバー(CNF)は、多くの分野で利用が期待される新技術として注目が集まっている。
土木分野での木材需要を拡大しようという取り組みは兼松サステックの環境パイル工法や飛島建設らのLP―LiC工法などが軌道に乗ってきた。
事業インフラ活用としては、都市部の木材・建材事業者にとっては、保有する不動産の活用が大きな収益源になる。江間忠HDは、不動産活用では長年の実績があり、経営の安定化に寄与している。今後、東京都内でのプロジェクトなども出てきそうだ。
木材・建材事業の範疇を少し超えたところに商機があり、その事業化によって次の展望も開けてくる。こうした取り組みの拡大が、業界の健全な発展につながることを期待したい。