「林業活性化」に着目、住宅・建材など食指が伸びる銘柄は?

「林業を仕事にしたい、すべての若者へ」をキャッチコピーに、就業説明会がこの時期東名阪で開かれている。昨日4日は有楽町の東京フォーラムで全国35道府県の森林組合がブースを出して、無料相談会が開かれた。過疎化と高齢化で担い手が不足し、間伐もままならず荒れ放題の森林を保護し、産業として育成強化する取り組みは急務となっている。

風水害の人的被害を大きくする要因ともなるため、林業の産業化は安倍政権の「日本再興戦略」に早くから盛り込まれた。海外のような非住宅建築に木造のよさを取り入れる動きは顕在化しており、新国立競技場の設計に採用されたことで追い風が吹き始めた。

地元の材木をふんだんに活用した小学校の新校舎が父兄や児童に大好評で、地方創生のシンボルともなっているとの報道をよく目にする。一方で木質バイオマス発電所の建設ラッシュが続いたことで、燃料の森林チップの確保が難しい状況すら起こっている。

環太平洋経済連携協定(TPP)が締結されると、マレーシアなど森林資源輸出国からさらに安価な製品が日本に入ってくると懸念されてきた。当然、国内産の木質建材には価格低下圧力がかかる。ところがトランプ政権誕生でTPP発効に待ったがかかった。国内の林業関係者にとっては、林業の産業化に向けた施策に腰を据えて取り組める余地が広がったと前向きに受け止めることができる。

スギ花粉が飛散し始めた。戦後に植林されたスギを伐採して花粉の飛散が少ないスギに植え替える東京都など自治体の動きが話題に上る時期でもある。

以上のように「林業活性化」というテーマは地味で株式テーマとしては脇に置かれたままだが、中長期の視点で考えるなら、今こそ注目する価値が大きいのではないだろうか。

では、具体的にどういった銘柄に食指が伸びるかを考察したい。まずは住友林業(1911)をはじめ高級木造住宅を手掛けるメーカーだ。この分野にはRC(鉄筋コンクリート)専業メーカーも参入しており、競争は激化している。住宅着工戸数は2009年以降低迷し、年間100万戸を下回る水準が続くが、木造住宅はシェア約55%で安定推移している。老朽化した住宅の建て替え需要が耐震補強という観点から増え続けており、それが大手から新興まで幅広い住宅メーカーの競争を促している。

その中で有望なのは以下の2社だろう。まずは16年4月に「3年間で1000棟」を目指して参入したパナホーム(1924)だ。今年8月1日付けで親会社のパナソニック(6752)の完全子会社化となる予定で、パナホームの経営基盤強化が見込まれる。

もう1社はミサワホーム(1722)だ。同社はトヨタホームによるTOB(株式公開買い付け)と第三者割当増資を組み合わせた出資によってトヨタホームの子会社となったばかり。名実ともにトヨタ自動車(7203)のグループに入ったので、こちらも経営力が増強された。

今後この2社が、住友林業と同じく戸建て以外の非住宅(老人福祉施設や賃貸アパート)にも力を入れて、それらに木質素材をより多く活用すれば「林業活性化」の中核銘柄に躍り出るだろう。

さらに「木質建材」のメーカー各社にも需要拡大という恩恵がもたらされるので個別に物色先を見極めるチャンスが訪れている。代表銘柄は、永大産業(7822)セブン工業(7896)ウッドワン(7898)大建工業(7905)だ。すでに今期の第3四半期決算発表を済ませた会社もあれば、これからのところもある。値動きは良好なので押し目を拾いたい。

住宅関連の銘柄は、大東建託(1878)東建コーポレーション(1766)スターツコーポレーション(8850)といった賃貸アパート経営関連が相場でハヤされた。相続税改正やマイナス金利の状況下で株高を演じたものの、供給過剰問題がクローズアップされ始めた今年は反落基調をたどっている。このように賃貸アパート関連が“高原”となったことで、その代替として高級木造住宅や木質建材のような周辺銘柄に食指が伸びやすいとも目される。

(『株式ウイークリー』編集長)