HOME 構造計画(躯体)の解説 構造計画の目的 内外装材(国産無垢材) 空気環境の考慮
全ての構造用部材に国産無垢乾燥材(杉・桧)を採用。主たる構造用部材(柱梁等)には、強度及び含水率を測定した品質性能表示材(グレーディング材)を使用。

熊本県球磨地域を産地とするSSD球磨杉、SSD球磨桧を採用している。このSSDランバーの特徴は、㈱紅中SSDプロジェクト(大阪市浪速区)が開発した独自の木材乾燥法を用いて、これまで困難とされてきた国産杉・桧のグレーディング供給を可能にした事である。グレーディングとは部材一本毎にその強度と含水率を認定機器で計測し、その結果をJAS等級区分に沿って選別した上で、その品質性能を保証して供給する制度である。当該案件での採用が、木材関係者の国産材品質性能保証供給に取る組む事の契機となる事を願う。

■ 部材技術提供 ㈱紅中(大阪市浪速区)
構造計算(許容応力度計算)に基づいて、構造計画(構造図)を作成。

現在、木造建築において、2階建て以下且つ500㎡以下の建物については、特例法を持って構造計算が省略出来る事になっている。この事を持って、大半の木造建築物(特に木造住宅)が構造計算が成されないまま建設されている現状がある。当該案件においても、構造計算の省略が可能な案件ではあるが、上記グレーディング材の採用と共に、明確な建物強度を確保、提示する事により、国産無垢材の信頼獲得につながる事を期待する。

■ プレカット加工提供 ㈱中畑木材(堺市美原区)
木造軸組工法における金物接合と在来工法の複合工法を採用

近年、様々な木構造用接合金物が開発され、その優れた接合耐力性能から、採用実績が増加傾向にある。しかし、殆どの金物接合工法が集成材での使用を前提に開発されており、無垢材における接合金物の採用は基本的に無理であった。その状況の中、㈱グランドワークスが供給しているHSS金物が、無垢材における金物接合の試験を行い、公的データを収集して、使用する事が可能になったが、その前提条件として、無垢材はグレーディングにより規定以上(E-50,D-20)の品質性能を保証された部材に限られている。当該案件は、上記の通りグレーディング材を採用しており、条件を満たすことから、より確実に建物強度性能を確保する為に有意な箇所に金物接合を採用した工法を用いている。

■ 部材技術提供 ㈱グランドワークス
大開口箇所に、無垢材による門型ラーメンフレームを採用

木造建築において、構造的に重要なファクターとして耐力壁がある。この壁の量的確保や配置のバランスによって、建物の強度の概要が決定する。建物内に大きな空間や大型の窓等を設ける場合に、この耐力壁が不足する場合があるが、このような時に補う手法として、門型ラーメンフレームがある。このフレームの柱と梁の接合部には大きな力が加わる為強力な接合耐力が求められる。この部分の接合法について、幾多の工法が提案されているが、それらのいづれも、上記金物工法と同じく、集成材にのみ使用可能な技術である。当該案件では、京都大学生存圏研究所の小松教授が発明した、ラグスクリューボルト(LSB)による接合法を用いて、無垢材に使用した場合の実験を行い、取得した公的データを根拠に、無垢材使用と共に採用している。尚、この門型ラーメンフレームを採用する場合には、上記構造計算と別に、ラーメンフレームの解析計算が必要となる。又、使用する部材がグレーディングで品質保証されている事が必須条件である。

■ 技術提供 ㈱紅中(大阪市浪速区)
杉無垢本実板による水平構面強度確保

上記耐力壁と同様に、各階床面等の水平構面の強度確保が、木構造にとっての構造上の一要因となる。現在、この水平構面の確保に合板を用いる事が一般的な措置となっているが、自然素材である杉無垢板材での性能確保にこだわり、公的機関での実証実験を行った。内容としては、厚さ30㎜の杉無垢本実板を横架材に直打ちする方法を選択した。試験の結果は床倍率1.2倍の強度確保が可能である事が実証され、公的データとして活用できる事になった。当該案件では、現し天井部分に採用し、勾配がある為、軽減措置を加えて構造計算に算入している。この公的データ活用の場合においても、受け側の横架材(無垢構造用部材)のグレーディングにより一定以上の品質性能を有している事の確認と保証が、必須の前提条件となる。

■技術提供 ㈱紅中(大阪市浪速区)
国産無垢木材への信頼獲得と普及効果に期待

木材自給率の向上の方針に沿って結果を得る事と、その事により、日本の国土に大きな割合を占める管理すべき森林に良好な環境を保全する為には、国産無垢材を建築用構造部材として活用する事が先決事項であると考える。豊かな森林資源を合板やチップ、エネルギー等安易な活用方法に偏ってしまう事で、自給率自体は拡大する物の、森林保全のために戻すべき経済的効果が薄れてしまう事を危惧する。

森林資源をバランスを持って効果的に活用する為には、先ず第一に国産無垢材を建築用構造用部材に活用する事が肝心である。その為には、国産無垢材が需要者からの信頼を獲得する必要がある。当該案件で、品質保証供給を持って合板・集成材に頼らずとも、明確な建物の品質確保に貢献出来る事を実証し、更には、自然素材由来の良好な居住環境を実現する事で、有意性を証明し、その普及拡大に貢献する事を目指す。