次は生体環境についてです。

木材の使用度と健康の関連について調査し、インフルエンザにかかったか、ダニなどでかゆみを訴えたかなどを老人ホームで調べました。結果は木材をたくさん使った施設と、木材の使い方が少ない施設を比べると、インフルエンザにかかった患者は一目瞭然で木材を使った施設の方が少ないです。ダニによるかゆみ、転倒による骨折、不眠を訴える入居者、いずれも木材を使った施設には少ないです。つまり、木材を使った環境と言うのは、入居者にストレスを与えないということです。

さらに、オレンジの皮のにおい、丁子油の主成分、木材のにおいで脈拍と血圧の比較実験をした結果ですが、木材のにおいがすると、脈拍の安定は20%ぐらいの差が出ると同時に、血圧も下がります。これが、木材環境による、生体のストレスへの影響です。

また、ヤケヒョウヒダニと言うダニが家に住みつく代表的なダニなのですが、クマリンという木材が出す臭いをこのダニに嗅がせると、1日後には100%に近いダニが死にます。このように、木材のにおいというのは、そのにおいのもとで、ダニを殺す効果があります。

そのような木材で、フローリング、床を木材装備にすると、絨毯をひいた時でも、5分の1くらいにダニが減りました。

最後に、木造率が高くなると明らかに乳がんで死亡する人が減ります。顕著な数字がでていて、これは気温の問題であると考えられますが、木材ががんにも関係しているという事です。

ここには子供たちが、学校の内装を木に変えたらどうなったかというのを示しています。木質化改装前と改装後を比べると、子どもたちはかおりが……温かい、柔らかい、というように感じています。強弱では、やはりコンクリートの方が強いと思われますが、精神的にはのびのびと成長できるのではないかと思われます。


そして、これはWが木造校舎です。Rが鉄筋コンクリートの校舎です。それぞれの学校における、眠気覚ましや、集中力、体のだるさを調べると、木造校舎は眠気やだるさを感じる子がいないということです。子どもたちはこのような事を敏感に感じています。

さらに、木造と、鉄筋コンクリートと、内装木質の校舎で、インフルエンザで閉鎖した学級の率はどれぐらいあるかというと、木造校舎は11%、鉄筋コンクリートは23%、内装を木材で貼っていたら13%でした。要するに、木材を使った内装はインフルエンザにかかる率が少ないということです。

人間と同じとは限りませんが、マウスの行動の実験データもあります。アルミの箱と、コンクリートの箱と、木の箱でそれぞれマウスを飼ってみました。すると、コンクリートの箱ではくずれ型のマウスが多く見られますが、木材の箱のマウスは落ち着いて、安定した行動をとります。

最後に、木質の内装の特徴である住んで心地よい事の理由は木材が住環境性能、住みやすさが非常にいいからです。さらに、木は使っても無くなる事の無い資源なのです。

家を木造と、鉄筋コンクリートと、鉄骨プレハブで、建て始めてから完成するまでの炭酸ガスの放出量を比べた時に、木造で建てることに対して、鉄筋コンクリートでそれを作ると、4.24倍の2万1千8百14キログラムの炭酸ガスを出しました。鉄骨プレハブでは、2.87倍の1万4千7百43キログラムの炭酸ガスを出すことになります。このように、同じ規模の住宅をつくっても、木造住宅は建てる際に出るガスが非常に少ないです。つまり、環境に対する負荷が小さいということです。

これまでに話してきたように、木材の性質を活かした家には、人間にとっても良い効果があります。ただ、その使い方を間違えないようにしましょうということです。

今日は、家を建てる際にちょっと知っておきたい木の話の一部をお話ししました。どうもありがとうございました。