確かな品質の木材を選ぶ

住宅を建築するなら、まずは確かな品質の木材を確保する必要があります。乾燥ができている材料と、乾燥をしていない材料とを比べてみると、乾燥していない材料は水を含んでいるので、重量の点で違いが出てきます。

先ほど、木材は収縮と膨張を繰り返すといいましたが、乾燥材ではほとんどこのようなことはありません。ところが、乾燥していない材料を使うと、収縮と膨張を繰り返し、最終的に割れてしまいます。法隆寺に1300年間使われている建築材の柱を見るとわかるのですが、細かな割れがたくさん入っています。おそらく、それは法隆寺が建つまでに、山から切ってきてから10年、20年ほど経ってから使われたのでしょうが、それでもまだ収縮膨張を繰り返し、割れてしまっています。

次に、横に使った梁は2階の重さ、屋根の重さを受けていますが、その重みを受けている間にだんだんたわみます。この梁桁がたわむということは片側に柱を引っ張ってくるということです。すると、本来まっすぐ建っていなければならない柱がゆがみ、その付近の建具(ドア)は開け閉めが困難になります。また、釘を打ったあとボルトで留めると、木材の持っている水分によって釘やボルトそのものが錆びてきます。そして、乾燥していない木材は腐ったり、カビが生えたりしやすいです。そのため、住宅に木材を使う際には乾燥材を使うということがポイントです。

実際に未乾燥の梁か桁をボルトとナットできっちりと留めたものが、時間の経過と共にナットは浮いてしまっています。つまり、ボルトが何の役目も持たなくなっています。これらが、水を含んだ乾燥していない木材の欠点です。

燥したものはほとんどたわみませんが、未乾燥材は水が抜けて乾燥していく過程でどんどんたわんでいきます。未乾燥材は腐るとか弱いという点以外にもこのような問題点を抱えていて、建築の構造自体を狂わしてしまいます。

かたむき、割れる壁、廊下にビー玉を置くと勝手に転がっていくという現象が起きたりしますが、それは、下に使った木材が未乾燥であったことが原因で、家に住んでいるうちに木が縮んできて、廊下の床まで沈んでしまったりもします。

このようなトラブルが起きると困るということで、建築材の含水率の基準が日本農林機関(JAS)によって決められています。強度があまり関係ない壁、床、天井などの造作用の製材に対しては含水率が15%~18%以下で、一本一本にラベルを貼り、含水率を記入することが義務付けられています。住宅を建てるときの柱を一本一本見るとJASによって政府が保証している製材には、きちっと含水率が示されています。

去年の10月、公共建築物は木材を使って建てなければならないという指示が出て、JASのラベルが貼ったものを使いなさいと国で決められていました。やがて、この流れは、一般住宅にも広がっていくと思われます。

構造用製材というのは、柱や梁桁などの強度を必要とする部分に使う材料です。その含水率は15%~20%以下に定められています。壁の下地や、屋根の下地にも使われます。これは、トラブルがおきないための保険です。

そこで、便宜的な方法があり、電気抵抗を使った含水率計というものがあります。これは板の場合にしか使えないのですが、針があってこれを計りたい板に突き刺します。すると、針と針との間に電気が流れ、乾燥しているとあまり電気が流れないので、電気の流れの様子から含水率を表します。ただ、これは板に針を突き刺すので、板に傷がつくことが欠点です。

では、傷がつかない含水率計はというと、高周波式含水率計というのがあります。角のようなものを木材に押し当て、その際に高周波という電磁波を流し、すると、高周波とは電子レンジを暖めてくれる電波と同じなのですが、高周波は水が好きなので、水が多く流れていると良く吸い込み、その吸い込まれる量が出てきます。それで含水率が量れます。これは深くまではかれるので、断面の大きな柱などでも使えます。

このような含水率計で木材を一本一本検査してJASマークのラベルを貼り、住宅材に使えるかどうかなどの品質を示しています。

含水率といっても、木材の含水率は特殊な考え方です。普通、純金といえば、金だけで混じりけのないものを100%といいます。しかし、木材の場合は100%の含水率というのが存在します。

普通、しいたけが含水率100%というと、しいたけの形をした水ということになり、そのようなものは存在しませんが、木材の場合は200%の含水率の木も存在するのです。200%の含水率というのは木材の穴だらけの細胞を全て潰して、空間をゼロにし、空気を全て押し出して、木材のみにして、さらにそれを100度の乾燥機にいれ、何日も乾燥させ、もう水が一滴もない状態にした重さを比重にし、もとの重さからその水が一滴もない重さになるまで、どれぐらい減ったかが水の量に値します。

水の量と比べてみると、もとの重さがこの場合は1500g、その1500gに対し、潰した上に水を全部追い出して一滴も含まれていない状態の重さを500gとすると、木材だけの重さは500gで、水の重さは1000gということになります。つまり、木材だけの重さに対して、2倍の水を含んでいるということです。そこで1000÷500×100で、含水率は200%と計算できます。木材の含水率はこのように、水が一滴もない状態を分母に、そこに含んでいた水の量を分子にして計算します。この含水率が、建築木材で使う際は15%~18%、もしくは15%~20%でなければならないのです。つまり、木材だけの重さの20%の水を含んでいるものということです。ですから、木材だけの重さを500gとすると、100gの水を含んでいて、全体で600gであるということです。このことから、水の量が非常に少ないことがわかります。

建築に使う木材はそれくらいまで乾燥していなければならないということです。ところが、含水率をはかることは非常に難しいことでもあります。