建築材料として活かすために

木造住宅というのはこのように、木を縦、横にうまく組み合わせて建てたものです。そして、軽くて強い木材という性質をうまく使い分けると、屋根に使う材料であったり、縦に使う柱であったり、それぞれの長所を適材適所に活かすことができます。私たちはそのような木材を建築材料として重宝しています。その木材は利用上、加工上からの評価をすると、力学的に、非常に優れた性質・特徴をもっています。

まず、切ったり削ったりを簡単にできる、容易な加工性という特徴があります。先ほど述べた、様々な種類の樹木により、比重の数値をカバーする、多様な材質特性というのも特徴です。さらに、私たちは木材の家に住んで気持ちがいいと思うという点で、木は優れた材料であるといえます。一度木の家に住むと離れられない優れた居住性も含めて、木は何にでも自由に対応できます。

一方、木材を資源として評価すると、石油、石炭、鉄、アルミなどは、地中から掘り出して使うと、もう二度と使うことはできません。つまり、やがてなくなる材料です。ところが木材は、切っても、また種を持ってきて植えればまた大きくなり、次の世代の人も使うことができます。このように、木には資源としての持続性があるのです。そして、資源としての多様性、また、地球温暖化を防ぐこともでき、環境調和性が非常に大きいです。

さらに、省エネルギー性があげられます。その材料を作るのに、熱などは必要なく、勝手に樹木として大きくなってくれます。人間は、それを切り出してきて、加工して使うだけです。そのような点で、材料を作り出すのに、エネルギーの必要がないという特徴があります。

最後に、廃棄することが簡単で、再利用もできるという特徴があります。一時住宅廃材が潰され、ゴミになる際も、そのときの廃材が私たちの生活を支えてくれています。というのも、私たちは木材を食べています。例として、ガムには木材からとったキシリトールという成分が入っています。他にも、牛に木を食べさせているので牛肉も木材からできています。このように、潰してからでもまた再利用でき、広い用途を持っているのが木材なのです。

では、建築材として、どれぐらい用途が広いのかというと、まず、製材という段階があります。構成要素のうちでも一番小さいのは繊維・ファイバーであり、大きなものから小さなものまで、いろいろなものができます。建築材料の名前で、例えば製材という、丸太を切って、四角の板にした状態は、乾燥させたりすることで少し加工してありますが、一応木材そのものといえます。その製材をもう少し小さく板状にして、接着剤で固めたのが集成材です。今出てきたのは集成材と製材で、二つは言い換えればいとこ同士であるともいえます。

さらに、もっと難しい技術を使うと、単板というのがあります。丸太を、大根を桂むきするように、くるくると回しながら板のようにむいていきます。単板という板を張り合わせたのが合板といいます。もっと小さくすると、割り箸状にし、それにのりを塗って圧縮させてつくったのが、スティックプライという、梁や柱の代わりに使われるものです。それよりもさらに小さくして、接着剤で固めたのがOSLやOSBと呼ばれる板のようなもので、割れないようにしてあり、アメリカで特によく使われます。子どものお菓子でプレートというものがありますが、そのように接着剤で固めたのがパーティクルボードといい、これも壁細工に使われます。そして一番小さいファイバーは、質が50ミクロムで、長さは3㎜、細胞を一本一本取り出してきて、それをもう一度接着剤をつけて固めたものをMDFといいますが、MDFは木材の細胞を一つ一つばらばらにしてもう一度くっつけています。

このように非常に広い範囲を守備できて、現実に私たちが建築現場で使っているのが木材からとれる材料です。その例の写真もあります。柱、のし板などのように、丸太から製材して四角にしたものをそのまま使うのが製材です。その製材の中でも、板にしたものを何枚も張り合わしたもの、これが集成材です。こちらは構造上の集成材として、強度をうけもつように使います。こちらは、造作用の集成です。薄い板を何枚も貼り合わせて、そこに溝をほったり、表面にきれいな板を張ったりして見栄えを良くし使います。合板は薄いベニヤ板のような板を何枚も貼り合わせて強度を増して板状にするという、日本農林規格の企画に沿ったJASSという加工を施し、品質が保障されています。床に貼ったり、壁に貼ったりして使われます。MDFは繊維を一本一本ばらばらにして、もう一度接着剤で固めて作ったものです。この板は仮道管や導管や木繊維などといったものをバラバラにして、板状にくっつけられています。このMDFは厨房の家具に使われたり、扉などにも良く使われたりしています。右下の写真はパーティクルボードといいますが、これは、一本一本の繊維よりももう少し大きい、薄いチ?というものを貼り合わせ、圧縮してつくったものです。これをウェファーボードといいますが、この目に見えている一つ一つがウェファーといい、薄いですが、10㎝ほどで長めの、厚さは1ミリほどのものを接着剤で貼りあわせて、壁や床に使っています。このように、樹木は製材であったり、集成材であったり、合板であったり、様々なものに姿を変えていきます。

ところで、木材とは、小さな仮道管や導管などからできていると述べましたが、それらは穴だらけで、中には空気がいつも流れています。もちろん、空気というのは湿った空気から、乾いた空気まで、様々な状態で水分を含んでおり、木材は、その空気中の湿気を吸います。我々は、木材は生きているとよく言うように、木材は空気中の水分を吸ったり、あるいは空気が乾いていると、自分自身が含んでいる水を出したりします。

ちなみに、日本に住む私たちは、だいたい30度くらいで湿度が85%くらいの夏の気候から、気温が約8度で湿度が55%くらいの冬の気候まで、この範囲を行ったりきたりしながら生活していて、木材もそれは同じです。しかし、私たちは空気が乾いたからといって肌から水分をだしたり、湿った空気であるからといって水分を吸収したりすることはできません。しかし、木材はそれをやってくれます。その機能の根源にあるのが、先ほどのたくさんあいている穴です。

ある時、25年間住んだ家を建て替えるために潰すという話があり、それぞれの部材の含水率を計ることにしました。

2階の屋根裏、2階、1階、床下が水をどのくらい含んでいるのかという含水率を量ると、屋根裏は10%、2階は11%、1階は12%、ところが、床下は20%と、非常に高い数値でした。このように、木材というのは、長い間使っているうちに、ある一定の含水率に落ち着いてきます。その落ち着く含水率は、使われている場所によって異なり、それぞれにどのような違いがあるかというと、屋根裏は暑くてよく乾いている、2階は1階に比べて乾いている、床下は空気があまり流れないため、シロアリがでやすいという欠点もありますが湿っている、というように、温度と湿度に見合った含水率があります。

つまり、もしも、山から切ってきて、まだ水を含んでいる状態の木材で家を建てると、床下は湿っているので条件的に良いとしても、人が住む1階2階の柱や屋根裏では、使っているうちにどんどん乾燥してきて、低い含水率に落ち着きます。

ちなみに、切ったばかりの杉の含水率は200%程です。生の木を使うと、その使われている環境に見合うように乾燥していきます。

しかし、生の木材を使うというのは、非常に怖いことです。なぜならば、使っているうちに、それぞれの使っている部分の温度、湿度に合わせて縮んでいく、あるいは膨らむというように、収縮と膨張を繰り返して行きます。すると、やがて一本一本の柱や梁に狂いがでてきて、それが積み重なることによって、家の変形がおこります。

どれぐらいそのような状態がおこるかというと、今から20年ほど前のデータで、家が建ってから何年後かにトラブルが発生した率を見ると、一番多い壁クロスの亀裂というトラブルが約5年後ぐらいに100戸立てたらそのうちの83戸で見られました。一番早く起きるトラブルはというと、柱の割れで、約1年後に17%の確立でおきます。約4年後には建具の具合が悪いという現象が67%の確立で起きます。

このように、うまく乾燥していないもの、もしくは生のものを使うと、結構な年数が経ってからトラブルが発生します。家を買う前にまず分かっておかなければならないのが、乾燥についてです。では、どのような乾燥をしたらよいのでしょうか。