木材とはどんな材料か

まず、一番大切なことは、木というものはどのようなものかを知って頂くことです。

樹木というのは炭酸同化作用、つまり、炭酸ガスを吸い、太陽からの光と根からの水とで光合成しており、そこに葉緑素という触媒が加わります。空気中の炭酸ガスを葉から吸い込み、炭素だけ樹木に残し、酸素を葉から出しています。その際に必要なのが根から吸う水と太陽の光です。そして、糖を作り出します。この糖が樹木を作ります。

こちらに200年ほど経った吉野スギと100年ほど経った吉野スギがあります。こちらは空気中から吸った炭素だけを残したもので、私たちは木材と呼んでいます。この樹体の重さの半分が炭素です。

その木材の一番外側には樹皮がついており、その内側が木材です。木材の部分を見て、色が濃く、中心に近い部分を芯材といいます。色が薄く、白っぽい部分を辺材といいます。全体を木部といいます。この木部が建築材になります。形成層というのは、樹皮と木部との間にあり、ここで盛んに細胞分裂し、樹木は外へと生長し、大きくなります。つまり、外側が若い細胞で、内側へ行くほど古くなります。

ここにスギとヒノキがあり、電子顕微鏡でサイコロ状に切った杉の木の断面の上下の切り口(木口)、年輪に平行に切ったもの板目の面と、年輪に直角に切った柾目の面がわかります。

このスギ・ヒノキを見ていただくと、蜂の巣状であり、その一つ一つが仮道管という細胞で、このような細胞がたくさん集まっています。細胞一つ一つの大きさは部分によって違いますが、大体ひとつの縦横が50ミクロム、長さが約3㎜と非常に小さく、これらの細胞が集まってできたのがスギであり、ヒノキです。芯から外へ外へと大きくなっていきます。

去年と今年の境界がこの線、だいたい9月の中ごろまで細胞分裂して大きくなっていきます。見えている大きな細胞は去年の春にできていて、小さな細胞が集まっている部分は去年の夏から9月の中ごろにできているのですが、ここにある線を境界にして、2月ごろ、ある日突然、大きな細胞が分裂し始めます。

このように、小さな細胞がたくさん集まってできているのが針葉樹で、アカマツ、カラマツ、エゾマツ、トドマツなどがあります。建築材に使われる、葉っぱが針状にとがった樹種の細胞の白い部分は細胞壁であり、黒く見えている部分は空気です。見ていただいたらわかるように、スギにしろ、ヒノキにしろ、黒い部分が非常に多いことがわかります。実は、スギの場合は全体の約80%、ヒノキの場合は約77%が空気です。本当の木材の実質とも言える白い部分は、杉では約20%ほどであり、空気をたくさん含んでいるということがわかります。これは大変重要なポイントです。

こちらは広葉樹といって、葉っぱが広い樹木の木口、つまり断面です。例えば、クリやカエデ、サクラ、クワなどが広葉樹です。この柾目と板目の写真を見てみると、針葉樹とは違いがあります。

というのも、広葉樹は細胞構成が複雑であり、針葉樹よりもやや高等であるということです。針葉樹というのは、今から約3億年前に地球上に現れましたが、それより1億年ほど遅れて広葉樹が現れました。そのため、やや高等で、高等な分、細胞の種類も多いです。

そして、大きな穴が見えますが、この穴を導管といい、この導管とは根から葉に向けて、水が通る水道管の役割があります。その導管を木繊維という小さな細胞が埋めています。これは樹体を支える人間で言えば筋肉のような役割を果たします。

そして、こちらに見える細胞は柔細胞といい、いわば食糧倉庫のような役割を果たす細胞です。この3つの細胞から出来上がっているのが広葉樹です。

先ほど、木材は穴が多く、空気だらけだと述べました。穴が多く、空気を多く含んでいるため、水に浮く、水に浮くということは、比重が1.0よりも小さい。コンクリートの比重は7、8程度であるため、木材の比重が軽いことは一目瞭然です。軽いということは、決して欠点ではなく、おおきな長所であると考えられます。スギの空気は約80%、ケヤキの空気は約53%、そして、本当の木材の比重は1以上で、本当は水に沈むはずのものです。つまり、穴を全て潰し、空気を追い出すと、木材は水に沈みます。そのような意味で、木材の中で一番重いのはリグナムバイタという、東南アジアに生えている木で、比重は1.3です。この木は空気があっても水に沈みます。逆に一番小さいものはバルサという比重が0.1の木で、水には沈みません。
このように、木材は比重が0.1で空気が97%のものから、比重が大きいものまであるので、建築に使う材料としても、非常に広い範囲を守備できます。

建築材料としては、比重が0.3以上、0.6未満のものに集中していますが、見てみると、それらは針葉樹ばかりです。これは、比重が小さいのは針葉樹材で、大きいのが広葉樹材だからです。軽く、空気が多く、弱いにもかかわらず、建築材に使われています。

これが、私たちが住宅を建てるときに使っている樹木、木材の実態です。

実際に、他の材料と比べ、木材がどれくらい軽いかというと、ここに、比重が0.46のエゾマツがあります。ヒノキが約0.4ほどなので、それよりも少し重めです。このコンクリート、網、鉄と比べた比引っ張り強さ、非圧縮強さは、一桁から二桁ぐらい小さいのですが、強度はそれほど変わりありません。

そして、木材とコンクリートなどを比べてみると、木材2300、コンクリート16、アルミ900、鉄181、と比引張り強さは桁違いに大きいです。今度は、圧縮して潰したときを比べてみると木材は826、コンクリートは282、鉄156と、いずれにしても3倍か4倍の数値です。このように、木材は、たくさん空気を含んでいたおかげで、軽くて強い材料になります。

国産の材料の非圧縮強さを挙げていますが、杉も長さと厚さが比べてもあまりかわりがなく、広葉樹であり密度が高く比重が多かったブナよりも強いことがわかります。さらに、キリは1890ともっと強いです。このように、空気をたくさん含んでいるということは、実は軽くて強いということがわかります。これが、針葉樹が建築材として必要となる理由のひとつです。