木材住居に心地よく住む

木材で家を建てると、このようなメリットがあります。例えば、居住性・住みやすさ、室内木構、屋内の温度・湿度や材質性、感覚的な環境、あるいは音の感覚、吸音、遮音、防音などの性能や、私たちの体が直接感じる健康に対する影響などがあります。

室内気候ですが、木材と他の材料、例えばコンクリートや土壁、レンガなどを、熱伝導物と比熱で考えて見ます。

熱伝導率とは、熱を伝えやすいかどうかです。これは、熱を加えたときに、温まりやすいか、そうではないかがわかります。数字が大きいほど、熱を伝えると思ってください。

その目で、材料をみると、杉や桧は、0.083、0.088という数字であるのに比べて、鉄筋コンクリート住宅のようなコンクリートは、1.4ですから、15倍ほど熱を伝えやすいです。木材はほんとうに熱を伝えにくいとわかります。……温まりやすい性質、これを比熱といいますが、今度はこの数字が大きいほど、温まりにくいと思ってください。……スギ、ヒノキで0.42倍です。なので、西日が差しても、木材自体はなかなか熱くなりません。ところが、コンクリートの壁に西日が差すと、壁が熱くなります。

このような視点で、室内の壁にどのような質のものを使うと、どのように変わるかをみると、グラスウール、コンクリートなど様々なものを使いましたが、10㎝のスギ壁は20㎝のコンクリート壁に相当することがわかりました。つまり、薄い木材でも、熱を伝えにくく、性能が同じということです。

次に、熱の逃げやすさです。室内を暖房すると、その熱は必ず温度の低い外へと逃げていきます。その熱の逃げやすさですが、グラスウールの、断熱材の熱の逃げやすさを1とすると、木材は2倍熱を逃がしやすいです。しかし、鉄と比べると450分の1の数字です。つまり、鉄は木材より450倍熱をにがしやすいということです。これでは、いくら室内を暖めても、外に熱を奪われてしまいます。コンクリートはそれよりは小さな数字ですが、それでも、木材の15から20倍の熱を逃がします。この性質はどこから来ているかというと、最初に述べていた、木材はたくさん空気を含んでいるという点です。空気があるから熱が逃げません。スギ1㎥を3万円とし、その80%は空気です。木材を買っている値段はあとの20%です。つまり6000円分で、残りの2万4千円は空気です。しかし、その空気が性能を発揮するのです。

鉄筋コンクリート住宅と木造住宅の室内温度の変化をみると、例えば、鉄筋コンクリート住宅の室内の1年間の変化、こちらは木造住宅の室内の気温の変化は、鉄筋コンクリート住宅のほうが変化が少ないです。そして、外気との差は、鉄筋コンクリート住宅の壁と木材住宅の壁を比べると、やはりこちらも、鉄筋コンクリート住宅のほうが、差が小さく、外気の影響を受けにくく、木造住宅のほうが受けやすいということがわかります。

これはどういうことかというと、理由のひとつは、木造住宅は壁が薄いということです。先ほど、10㎝の杉壁は20㎝のコンクリート壁に相当するということを述べました。つまり、半分の厚さでよいということです。これは、木造住宅の壁は薄すぎる上、その材料は木材を中に使っていないという現実にあたります。

さらに、もうひとつの理由は、構造が木造住宅の気密性に劣るということです。最近は高気密、高断念という住宅工法が一般になりましたが、これは好みの問題であるとはいえ、よくエネルギーを食う住宅であるといえます。そのために、このように外気の影響を受けやすいということがあります。それでは、壁をもう少し厚くすればよいという考えで、現在ヨーロッパでは、簡単にいうとログハウスのように、厚さ30㎝の木質角、丸太の両耳を落とし、上下を落とし、角材の厚さがそのままの丸太を重ね合わせて壁にするという住宅があります。

次は、湿度調整についてですが、……それぞれの材料が蒸気を吸い込んだときに、湿った空気が入ってくると、壁がどれほどその空気を吸い込んでくれるかというと、ビニール壁紙というのはほとんど吸ってくれません。……は室内に入ってきた蒸気を吸ってくれます。これは実際の住宅で図ったものですが、青いのが1日の外気の湿度の変化です。黄色いのはビニール壁紙の貼った住宅内の1日の湿度の動きです。赤が合板をはった1日の室内の湿度の動きです。一目瞭然でビニール壁紙を張った室内の湿度は、外気の湿度そのままです。合板はほとんど変化しません。