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2011年12月2日
給湯器『エコキュート』の騒音問題(損害賠償訴訟:前橋地裁)

オール電化住宅などで普及が進み、累計出荷台数が2007年9月に100万台、09年10月に200万台を突破した『エコキュート』(自然冷媒ヒートポンプ給湯機)。この『エコキュート』から出る低周波音で不眠や吐き気などの健康被害を受けたとして、高崎市内の男性が11年7月15日に、メーカーのサンデン(株)(本社:群馬県伊勢崎市寿町、木内和宣社長)と、大和ハウス工業(株)(本社:大阪市北区梅田、大野直竹社長)を相手に267万円の損害賠償を求める訴訟を前橋地裁高崎支部に起こしている。以前より、深夜に運転開始することから、近隣から機械の騒音トラブルになることが指摘されていた『エコキュート』だが、それが現実のものとなったかたちだ。

『エコキュート』の運転音が騒音となる可能性があることは生産団体も認めている。今回訴えられたサンデンも加盟している日本冷凍空調工業会(日冷工)は4月、「騒音等防止を考えた家庭用ヒートポンプ給湯機の据付けガイドブック」をまとめて、ウェブサイトで公開している。『エコキュート』の販売や設置の実務者向けのもので、騒音問題への対策として、隣家などに影響をおよぼすような場所は避けるよう設置上の工夫などを解説している。

2011年10月7日付け 住宅情報ナビ掲載記事から引用 転記

訴訟内容の概要は、原告の居住地(群馬県高崎市)の隣地で、大和ハウス工業(以下D社)が注文建築を新築した際に、原告宅との敷地境界線付近に設置したエコキュート(主にヒートポンプユニット)を原因とした騒音により、原告及びその家族が不眠に陥り、健康を害したとされる物である。

この件が裁判にまで至ってしまった経緯として、調停案が示した「エコキュートの移設と費用の業者側負担」に対して、原告隣地の施主は、設計デザイン変更による景観上の損失を理由に不同意。施行者のD社は、法的責任の不在を理由に費用負担を拒否した上で、「あくまでも隣人同士の問題」であると主張。一方メーカーのS社は、「費用負担を施行業者と分担する」という前向きな回答。この件に対して、D社の対応を不服として、調停を取り下げ、裁判に至る事となった。

エコキュートが騒音問題となりえる事を、メーカー及び生産団体は認知している。S社が加盟する日本冷凍空調工業会(日冷工)は、エコキュートを一般的には静かな機器としながらも、深夜に使用する事や都市の過密化等により、騒音への苦情が発生する可能性があるとして、設置方法等の細かな対策をガイドブックにまとめて公表している。今回の件は、景観優先で、このガイドブックが活かされていないようである。隣人等に対する配慮が欠けていた可能性がある。

エコキュートに関する根本的問題点として、低周波被害が存在する事を指摘する。この低周波とは騒音とは全く異なる物で、「うるさい」事は無くとも、振動や長時間の持続により、精神的ダメージを与え、「体調不良」や「鬱」の原因となるものである。当方が、エコキュート問題に関して、S社以外のメーカー数社に見解を求めたところ、一様に「エコキュートの運転音(40㏈程度)は国の規制値内であり、一般的認識としての騒音問題は存在しない」との回答であった。エコキュート問題を騒音問題としてだけの位置付けで、低周波問題には触れないメーカーの姿勢が垣間見える。この低周波に関する認知不足は、被害自体を「被害者の過剰反応」と結論付けてしまう可能性がある。

そして、最も大きな問題であると危惧することは、エコキュートの騒音問題や低周波問題の存在が認知されていない事である。今回の訴訟に関しても、業界内では重要な問題でありながら、報道等が一切と言っていいほどされていない現実がある。消費者団体には苦情相談が多数寄せられている事や、この件が原因の「鬱」による自殺者の存在(未確認情報)等の情報があるにも関わらず、情報の公開がされていない。電力会社が「オール電化」と共にエコキュートの普及に関わってきた事や、所轄官庁が経済産業省であることから、3.11以降の原発問題と同様の構造があるのかと勘繰ってしまう。

エコキュートの設置を検討する際には、これらの問題が存在する事を認知した上で、日冷工がまとめたガイドブックを活用する事や、免振ゴムパットを用いる等の対策と近隣配慮を行う事が肝心となる。これらの措置で、問題の大部分は解消される物と考える。決して、エコキュートが欠陥商品であり使用困難であると訴える物ではない。

(社)日本冷凍空調工業会 家庭用ヒートポンプ給湯器の据え付けガイドブック

SSDP事務局 渡邊豪巳